立体トラスとは何かを分かりやすく説明します。
建築の専門の人でなくても分かるように説明します。
立体トラスは、英語で言うと three-dimensional truss と言います。
直訳すれば、3次元トラスです。
3次元ではないトラスも存在しますので、まずその話をしていきます。
2次元トラスということになりますが、
一般には平面トラスと言います。
そもそもトラスって何?
トラスとは下図のように三角形を基本に組んだ構造のことをいいます。
上のように3本の部材の端部を
どうにか工夫して接合すればトラスの出来上がりです。
「どうにか工夫して」と言いましたが
接合方法はたくさんあります。
接合方法によっては独自の技術で特許を取得している場合もあります。
後で説明しますが、上の図の形は重要な意味を持ちます。
上手く組み合わせれば、
橋も造れます。
上の橋はトラスを上手く組み合わせて効率よく(鋼材量を少なくして)
造られています。
このトラスは平面トラスを上手く組み合わせていますが、
いわゆる立体トラスではありません。
写真の橋は3次元的に造られてますので
立体トラス(3次元トラス)と考えてしまうかも知れませんが
平面(2次元)トラスを上手く組み合わせたものです。
立体トラスはこれです
立体トラスは上の図のようなものです。
立体の三角形を基本に組んだ構造です。
立体トラスはこれだけではありません。
上の図は四角すいと言われる形ですが
三角すいを基本とする形もあります。
また、他にもいろいろな形状が考えられます。
でも、一般的でいちばん構造的に扱いやすいのは
四角すい(上図)のタイプです。
四角すいタイプを組み合わせると
下図のような屋根が出来上がります。
ちなみに、上の立体トラスは実際に建てられている当社のルナントラスです。
画像が細かすぎましたので、拡大したものが下の画像です。
立体トラスが素晴らしいのは、トラス単独で床版(屋根)が造れることです。
単純な話、このトラス版に柱を建ててしまえば建物が完成します。
トラスの何がいいの?
おそらくここまで読んでいただいて
トラスのメリットがよく分からない。
そう思われているかも知れません。
でも、トラスは非常に構造的な効率がいいんです。
これを理解していただくために、
問題です。
ぜひ、考えてみてください。
1トン(10kN)の質量のものがあるとします。
これを長さ3mの鉄棒の先端に荷重させるとします。
最も部材が細くなるような荷重のさせかたを答えてください。
ただし、部材自重は考慮しないものとします。
あまりピンと来ないと思いますので
三択にします。
下の図のうちどの部材がいちばん細くなりますか?
答えはどれでしょうか。
そんなのバカにするな!
Cに決まってるでしょ!
そんな声が聞こえてきそうです。
答えはCですが、決してバカにはしておりません。
重要な考え方なのです。
まず、太さが同じ鉄棒だとします。
そのとき一番強そうなのはCですよね。
明らかに弱そうなのはB。
そして、AはBとCの中間ぐらいの強さ。
なんとなく上のような答えが出てきませんか?
Cが強そうであれば部材も細くできそうですね。
問題なのはBです。
すぐに根元からポキッと折れ曲がってしまいそうなイメージではありませんか?
1トンのモノを荷重させるときに、
Bのような部材の使い方をしないとしたら
それだけでも強い構造体が造れそうではありませんか?
ここで「トラス」が登場します。
Bの曲げが発生しない理想的な構造。
それがトラスなのです。
トラスは上の問題のAとCのような力しか発生しません。
部材に対して引っ張りか圧縮かのどちらかのみです。
Bのような曲げが発生しませんので
部材が細くても大丈夫なのです。
見にくいかも知れませんので
もう一度、問題の図を下に示します。(先ほどと同じ図です)
実際に、3mの鉄棒に1トンを荷重させたときの最小部材断面を調べてみました。
A.直径76.3mm肉厚2.3mmの鋼管パイプ(鋼材量15.9kg)
B.直径216.3mm肉厚4.5mmの鋼管パイプ(鋼材量70.5kg)
C.直径7.4mmの鋼棒(鋼材量1.0kg)
ここで注目していただきたいのは、
構造的に非効率なBの場合、鋼材量が70.5kgも必要です。
一方、Aは15.9kgでBの1/4以下の鋼材量です。
さらに、Cの場合はBの1/70以下と鋼材量が非常に少なくなります。
構造的にBが非効率で、AとCは効率的です。
トラスはBのようにポキッと折れ曲がる力(曲げ)が発生しません。
だから、AとCの部材の使い方となるトラスが効率的なのです。
(厳密に言うとAも座屈といって、あまり細いと折れ曲がってしまいますがBよりはずっと強いです)
トラスとコストの関係
簡単ですのでもう少々お付き合い下さい。
実際のありがちな部材で考えます。
一般の梁材とトラス部材です。
矢印↓はどれも同じ荷重がかかっているとします。
部材の長さは、どちらも同じで荷重位置も同じとします。
梁材とトラス材の支持位置は上図の三角の位置です。
このとき、左側の梁材は曲げで持たせるしかありません。
一方、右側のトラス部材は、部材には軸力のみが働いて曲げは発生しません。
また、右側のトラスの方が構造的な効率が良いので、
左側の梁材よりも鋼材量が少なくて済みます。
どのぐらい少ないかというと半分以下になります。
さらに、左側の曲げで持たせる梁材の場合
たわみと言って荷重させたときの変形(沈み込み)が大きくなります。
その梁を実際に使用するとたわみが大きすぎて振動したりするので
たわみを少なくする必要が出ます。
強度は十分であっても、たわみを小さくする必要があるのです。
たわみを小さくするには、より大きな部材断面にする必要があります。
結果、左側の梁材の鋼材量は実際にはもっと増えるのです。
一方、トラスの場合はたわみが小さいという構造的な特徴があります。
たわみを考えると、
ざっくりとした話ですが右側のトラス材の鋼材量は、
左側の梁材の鋼材量の1/3程度になります。
トラスの効率の良さは圧倒的なのです。
まとめ
鋼材量という最もコストにかかわる視点で
構造を考えると、トラスは優れた構造であると言えます。
トラスは曲げを排除し、軸力だけが発生するという
力学的性質があります。
トラスの中でも3次元のいわゆる立体トラスは
さらに構造的な特性により鋼材量を減らすことが可能です。
ルナントラスの効率の良さを少しは理解いただけましたでしょうか?
- 投稿タグ
- 立体トラス